魔法をかけて!

幕間


営業から帰ってきたヨウイチプロデューサーに私はコーヒーを淹れてあげた。
「お、律子、気がきくな。サンキュ〜」
「いえいえ、どういたしまして、プロデューサーさん♪」
私は飛びっきりの笑顔をしてみせた。
「ん、なんだ律子?やけにご機嫌じゃないか。さては1週間ぶりのお通j…」

パッカーーーーーーーーーン!

プロデューサーは最後までセリフを言いきることはできなかった。
何故なら、私がコーヒーを運ぶ時に使ったお盆でプロデューサーの頭を思いっきり叩いたからだ。

予想以上にいい音がした。


「…っ?!?痛ってぇえっ?!?うおぁ、あっつっうぅううっ?!?」
最後のは、プロデューサーが右手に持ったコーヒーカップの中身を自分のズボンにこぼしたせいだ。
「律子、お前何すんだ!思いっきり殴るなんて…」
「それはこっちのセリフです!全く、レディに対してなんて破廉恥な…っ!セクハラで訴えますよ?!」
「あんなの冗談に決まってるじゃないか、コミュニケーションだよ、コミュニケーション!」

はぁ〜…、さっきまでのいい気分が台無しだ。
1年前のこと、“あの日のこと”を思い出してせっかく幸せな気分だったのに。
その幸せな気分にしてくれた張本人によって、いま最高に不機嫌な気分になってしまったじゃない!
本当、私のプロデューサーってば、有能なのか無能なのか…

「最悪のバッドコミュニケーションですよ、全く…!ハァ、よくこんなプロデューサーの下で私トップアイドルになれたな〜…」
私は大げさに肩を落としてみせる。
「そりゃあ、アイドルが素晴らしかったからだろ?俺は何もしてねぇよ。」

プロデューサーはいつだってそう言う。
だけど、それは明らかに嘘だ。
私一人の力ではトップアイドルになることなんて絶対に出来なかった。
いや、そもそもアイドルにすらなっていなかっただろう…


「ねぇ、プロデューサー?」
「ん、なんだ律子?」
プロデューサーはズボンにこぼしたコーヒーを持っていたハンカチで拭きながら返事をした。
「どうして……、どうして私をアイドル候補生に、なんて思ったんですか…?」
「どうして、って……」
ズボンを吹いていた手を止め、プロデューサーはしばし考える素振りをし、それから私の方を向いてハッキリとこう言った。

「律子に、アイドルとしての輝きを感じたからだよ。」

「律子なら、絶対トップアイドルになれると、そう確信したから。」

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