倉田良平は、自室にこもって小説を書いていた。その原稿用紙の一番最初の行には「倉田家の一族」と書いてあった。
しかし、良平は数行筆を走らせた後、すぐにその原稿用紙をくしゃくしゃに丸めて部屋のゴミ箱に捨ててしまった。
「いや、いくらなんでも我が家のことを小説に書くわけにはいかんな・・・。最近スランプだったとはいえ・・・。」
良平は席を立ち、室内を歩き回り始めた。
倉田武男は、自室で電話をしていた。
「ハイ、その件につきましては・・・、ハイ、・・・イエ、今週中には・・・、ハイ、分かりました。・・・、ハイ、それでは・・・。」
武男は携帯電話を切り、ベッドに横になった。
「・・・これで、あとは・・・。」
武男は右手を上に突き出し、じっとその手を眺めていた。
小島信也は、重要参考人として警察署にいた。
「・・・しかし、一体なぜあんなことに・・・。」
事件のことを考えているのか、あるいは別のことを考えているのか、彼は腕を組んで目を瞑ったまま考え事をしていた。
八坂征一は、病院に戻って休憩室で一人、自販機のコーヒーを飲んでいた。
「・・・せっかくのチャンスだったのに・・・、もう少し早く・・・、クソッ!!」
彼は、自分の右手で自分の膝を、悔しそうに思いっきり叩いた。
「もう、二度と・・・、二度と・・・。」
彼の目には涙が光っていた・・・。
飯塚奈緒は、自室でいすに腰掛けていた。机の上には写真が乗っていた。その写真には幼い少女と中年の男性と女性が笑顔で写っていた。
「父さん、母さん・・・。」
奈緒はその写真を抱え、抱きしめた。
「私、私・・・。」
その声は震えていた・・・。
「あ〜〜ん、全然分からないよ〜〜〜!!!」
食堂で謎を考えていた真琴が突然叫ぶ。
「佐裕理もさっぱりです。舞は何か分かりましたか?」
「・・・私もさっぱり。」
「ん〜〜〜、なんであゆあゆはあんなにもあっさりと分かっちゃうのかな〜?まさか、あゆあゆが犯人だったりして。」
真琴がとんでもないことを言い出す。
「いや、それはない・・・。」
真顔で答える舞。
「あはは〜、そうですよ〜。あゆさんが犯人のはずはありません。」
「・・・せめて犯人が犯行当時に着ていた服が見つかれば・・・。」
舞がポツリと言う。
「はえ、どーいうこと舞?」
佐裕理が尋ねる。
「才蔵さんはめった刺しにされていた、って刑事さんから聞いた。ということは、犯人は返り血を浴びたはず。そんな服を犯人が未だに手元においておくはず無いから、どこかに捨ててるはず。それが見つかれば、なんらかの手がかりが・・・。」
「あれ、それはないよ。」
と、真琴が事も無げに舞の説を否定する。
「え、どうしてですか?」
と佐裕理。
「あれ、聞いてないの?才蔵さんは、布団の上から刺されてたから、犯人が返り血を浴びていることはないだろうって・・・。」
「・・・、それ誰から聞いたの・・・?」
舞が勢い込む。その勢いにたじろぎながらも、真琴は先ほどの話を舞に話す。