第二幕 倉田家の一族

問題編1

二人の少女は飛行機に乗っていた。
「もうすぐだね、舞。」
「・・・うん。」
舞、と呼ばれた黒髪でロングヘアー、後ろを大きな青色のリボンで結んだ少女は無愛想にコクンと頷く。しかし、その表情にはわずかに赤みがさしていて、喜んでいるように見えた。少女の名前は「川澄舞」、そしてその隣に座る、彼女に話しかけた茶色がかった髪をしていた、頭の後ろに緑色の大きなリボンをつけたロングヘアーの少女の名前は「倉田佐裕理」。二人は高校卒業後、ドイツに留学した。それから1年経った今年の夏、二人は高校時代の後輩「相沢祐一」という少年に呼ばれ、一時日本に帰国することになったのだった。
しかし、佐裕理にはそれ以外にも用事があってのことだった。
このことは舞にも知らされていなかった。出発直前になって、
「ちょっと、用事があるので日本に着いたら佐裕理の実家に寄ってもいいですか?」
と佐裕理が舞に対して言った。
「・・・別に構わない。」
と舞はその突然の申し出にも別段不審を抱かずに答えたのだった。その後、舞は「そーいうことだったのか・・・」と一人納得していた(また安堵もしていた)が、佐裕理にはその意味までは分からなかった。  
佐裕理の実家はかなりの大金持ちで、かなりの地位も持っている。現当主で佐裕理の祖父でもある「倉田才蔵」は78歳で、若い頃はかなりのことをしてきた。法ギリギリの手段を講じて、今の地位を築いてきた。その分、恨みも多く買ってきた。その当主が病に倒れ、余命1週間と宣告された。佐裕理は、その知らせを受け帰国の手はずを整えていた。当初は一人で帰国する予定だったが、なんとなく舞とも一緒に帰ったほうがいいだろう、と思い舞の分のチケットもとっておいた。結果的には、祐一からの誘いも合って舞にも帰国動機ができたのだが。
「・・・佐裕理。」  
着陸前になり、シートベルトをつけようとしている佐裕理に舞が話しかけた。
「どうしたの、舞?」
「なんだか、嫌な予感がする・・・。」
「嫌な予感って・・・?」
「・・・分からない。でも、なんとなく血が流れる・・・、そんな予感がする。」
舞は思いつめたような表情で、そう佐裕理に伝えた。
「あははー、誰かがケガをするってことですか?それくらいのこと・・・」
「そんな、やさしいものじゃない。」
舞はキッパリと言い放つ。
「・・・佐裕理のおじいさん関係、ですか?」
「・・・・・・。」
舞は無言のまま佐裕理から目を逸らした。  
それは、佐裕理も感じていた。  
遺産相続。  
当主の余命があと1週間というなら、当然持ち上がってくるのが相続問題である。
才蔵は、「死ぬ間際に遺言を発表する」と公言している。その遺言内容によっては、それに対して不服のあるものが何らかの行為に走るものが現れるかもしれない。かの有名な推理小説ほどでなくとも、遺産相続を巡ってのトラブルが起こるかもしれない・・・。  
小説の中の話、と割り切ってしまえばいいかもしれない。しかし、佐裕理の祖父が行ってきたことは事実だ。財産もかなりある。それに目のくらんだ身内がいて、その人物に遺産が渡らないなどということになれば・・・。  
不安を抱え、二人の少女は1年ぶりに母国の地に降り立った・・・。

「海か〜、楽しみだね〜真琴ちゃん!」
「うん、すっごく楽しみ!!あゆあゆも一昨日のプール勝負で泳げるようになったもんねぇ!」
「うん!これも祐一君や皆のおかげだよ!」
「まあ、真琴に比べたらまだまだだけどね〜♪」
「うぐぅ〜〜!!見ててよ、きっといつか真琴ちゃんよりも泳げるようになってみせるんだから!」  
とある街の商店街を二人の少女が歩いていた。一人は、たい焼き型のポシェットを肩からかけ、頭には小さなリボンのついたカチューシャをつけた、あゆあゆと呼ばれたショートカットの少女「月宮あゆ」である。彼女はコンビニで買った「たい焼きアイス」を食べながら商店街を歩いていた。その隣を歩く少女は、右手に鈴のついたひもを巻いていて、髪は狐色で左右をリボンで結んだロングヘアー。真琴ちゃんと呼ばれた彼女の名前は「沢渡真琴」。彼女もコンビニで買った「肉まんアイス」を食べていた。  
二人は、ある事情から水瀬家に居候している。あゆは様々な理由から高校1年生の18歳。真琴は保育園でバイトをしている。今は夏休みのため二人で遊んでいたところだった。
そんな、彼女たちはこの夏休みに、この街で知り合った多くの仲間達と共に海に行く約束をしていた。あゆは事情が事情の為、全く泳げなかったのだが、一昨日にひょんなことから真琴と泳ぎの勝負をすることになって、猛特訓の末泳げるようになったのだった。
「そーいえば、今日だったよね舞さんたちが帰ってくるの?」
あゆと舞たちは知り合いで、お互いに祐一を介して知り合った。
「そうなの?真琴はよく知らないけど。」
「確かそうだよ。祐一君が昨日言ってたもん。」
「あ〜、昨日もあゆあゆ、ゆーいちとデートしてたんだっけ?よくもまー、飽きないものよね〜。」
と真琴は大げさに両手を広げてみせる。
「あれ、真琴ちゃん、ひょっとしてボクが祐一君とデートしてることに嫉妬してる?」
とあゆがさっきの仕返しとばかりに、意地の悪そうな目で見る。
「べっ、別に嫉妬なんかしてないわよーー!!あ、何よその目!?だから違うって言ってるでしょ!?あう〜〜〜〜!!!」
真琴は人前にも関わらず、大声で叫びながらあゆをポカポカ叩く。あゆは一本とった、という感じで満面の笑みを浮かべている。  
そんな彼女達は今年のゴールデンウィークに、とある事件に巻き込まれた経験があった。その事件はあゆの計らいで、事件にならずに解決したが、新たなる事件が彼女達を待ち受けていることに、二人はまだ気づいていない・・・。

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