クリスマスの歌―神さまのBirthday―

第四章


その日、真と雪歩のユニット“True Snow”は律子とともにクガTVの収録に来ていた。来年の1月に2人はアルバムを発売するため、その宣伝を兼ねての出演だった。  
収録は順調に進み、2人がそれぞれのソロ新曲である真の「迷走Mind」と雪歩の「Kosmos,Cosmos」を初披露したところで休憩となった。
「お疲れ様、2人とも。」  
舞台を降りた2人を出迎える律子。
「へっへ〜、どうでしたか、ボクの歌!」
「ええ、最高に良かったわよ真!真らしさを存分にアピールできたと思うわ!」
「うん、真ちゃんすごくカッコよかったよ!」
「そういう雪歩も良かったわよ!雪歩のかわいらしさが伝わってきたわ。」  
律子は2人にタオルを渡し、お茶を配る。  
いつもの収録風景。しかし、どことなく上の空な真。実際収録中にも時々ミスをおかしていた。それでも自身の曲を歌う時にはミスをしないあたりはアイドルたる所以だろうか。
「…真、本当にゴメンネ…」  
律子はいつもの調子じゃない真の様子が、“例の件”によるものだと知っていて、それがどうにもならなかったことで責任を感じていて、だからこそ謝らないわけにはいかなかった。
「?律子、急にどうしたのさ?ボクは律子に謝られるような覚えはないよ?」
「その、ドラマの件……私もプロデューサーも掛け合ってみたんだけど…」  
カグラTVで来年の3月から放送予定のドラマに真が出演することになった。しかし、その撮影スケジュールが最近まで決まっていなかったのだ。その原因は、共演者であるもう1人のアイドル、業界の超大手・彩之宮ヴィントブルームプロダクションに所属する彩之宮財団のお嬢様・彩之宮美夏(みなつ)、彼女のスケジュールは常に詰まっていて、さらに1日単位で仕事が入るため、彼女のスケジュール調整がギリギリまで出来ないということにあった。そして、ようやくそのスケジュールが決まったのが昨日、その日程と言うのがクリスマスを挟んだ1週間。ロケ地は東北。  
このことにより、真は雪歩のバースディパーティー及びクリスマスイブパーティーに参加できなくなってしまったのだ。  
ヨウイチや律子はなんとか予定がずらせないかとかけあってみたが、それ以上早くすることは彩之宮美夏の都合がつかないから無理、それ以上遅くだと今後の撮影にさしつかえるからと、断られた。
「まあ仕方ないですよ。相手があの彩之宮美夏ですから…  
悔しいけど、ボクらではどうにもならないってことくらい分かってるつもりです。」  
この業界に限らず、彩之宮に逆らえばどうなるかというのは想像するだに恐ろしいものだった。
「本当にゴメン……」
「だから、律子は何も悪くないよ。それより雪歩、ゴメンね。誕生日を近くで祝ってあげられなくて…」
「いいんだよ、真ちゃん。そんなことよりドラマの撮影頑張ってね!初の主演なんだから!」
「主演、ね…アハハ、確かにそうだけど、ヒロインに惚れられる女子高の先輩って、なんだか喜んでいいのやら泣いていいのやら…」
「ロボットに振られるヒロイン役よりはマシなんじゃない?」  
と、そこへ3人とは別の声が聞こえた。3人がその声をした方を振り向くと、そこには伊織がいた。
「あら伊織じゃない。どうしたの、こんな所へ?」
「別に、ただ近くまで来たから差し入れに来ただけよ。」  
そう言って伊織は大きな箱を差し出した。その箱の中には菓子が入っていた。
「うっわ…、これ高いやつじゃない?!」
「別に、そんな大したもんじゃないわ。」
「うわっ、これすっごくおいしい!!」
「お茶によくあいます〜。」  
しばらくの間3人は菓子に夢中になっていた。伊織は律子からお茶を淹れてもらいって、しばらく3人が菓子を食べている様子を眺めていた。
「…真、ゴメン。」  
と、今度は突然伊織が真に謝った。
「…え?」
「……例の件、パパに頼めばなんとかなるんじゃないかって思ったんだけど…」  
伊織の父親は水瀬グループの総帥で、資産もありかなりのコネクションもある。それでも、彩之宮には敵わない。
「伊織、近くへ寄ったって…」  
水瀬グループの本社ビルはこのクガTVの建物のすぐ近くにあった。
「ゴメン…」  
伊織はもう一度真に謝った。いつになく落ち込んでいるのが分かる。  
真は立ち上がり、伊織のそばまで行き、伊織の背中を思いっきり叩いた。
「?!?!?痛っ!!ちょ、真!いきなり何すんのよ?!」
「うん、やっぱ伊織はこうでなくっちゃ!」
「…は?」
「しょんぼりした伊織なんて伊織らしくないよ?」
「……だからって、思いっきり叩くんじゃないわよ、この男オンナ!背中に痕が残ったらどうするつもりよ?!」
「お…男オンナだって?!そういう言い方は酷くない?!」  
結局言い合いになる2人。
「ちょ、ちょっと2人ともこんなところでケンカしなくても…」
「うっさい、メガネ!」
「んなっ?!なんで私までそんなこと言われなくちゃいけないのよ?!」  
止めに入った律子までケンカに加わる始末。その様子をオロオロと見ている雪歩は、勇気を振り絞り、3人のそばによって行く。
「さ…3人とも、お…落ち着いて…」
「「「雪歩は黙ってて!!」」」
「は…はぅ〜?!私やっぱりそんな役回りなんですね〜……」  
そのまま部屋の隅で穴を掘って埋まる雪歩だった…

第三章へ

第五章へ

戻る